危機管理の最前線に立つ皆様の建設的議論に期待
加藤勝信・内閣官房長官
政府としましては、目の前のコロナ対策にしっかりと取り組むと共に、これまでの対応で、改善すべき点があれば躊躇なく改善し、具体的な実行に移して行きたいと思います。
また我が国は毎年のように地震や風水害などの災害を受けています。我が国の体制は一義的には市町村が対応し、それを県や国が補完をするという枠組みですが、むしろ国が先頭に立たなければならないという状況も経験しています。
これから起こりうる災害時緊急時において、国民の命を守り、どう国難を乗り越えていくかについては、この国の基本である憲法を、どう考えていくかが大切なポイントだと思います。憲法審査会で今議論が進められておりますが、これを国民的な議論につなげていただきたいと思います。危機管理の前線に立っておられる皆さん方の、建設的な議論、政府に対する様々なご提言にご期待申し上げます。
(設立総会 来賓ご挨拶より)
今一番に日本が取り組むべき課題
松尾新吾・九州経済連合会名誉会長
私は九州電力で58年、電力事業に関わっています。ライフライン、電力・ガス・水道等は守らなければならないという要請もあって、それを実施してきたつもりです。災害には、電気に関することが非常に多いのです。そういう災害対策については、たくさん経験しておりますので、これまでの経験がお役に立てるかなと思っております 。
フォーラムは今一番に日本が取り組むべき課題を、真正面から取り上げ、見事な趣旨で設立されました。何としても実効性のある組織になって欲しいと心から思っています。
(設立総会 開会の挨拶より)
首都直下地震で日本がつぶれる!今起こって困ることに対応を
河田惠昭・関西大学特別任命教授・社会安全研究センター長
私は、絶対東京では泊まらないことにしています。首都直下地震が起こったら、ここで死ぬしかないからです。その時は日本が潰れます。2 万3 千人亡くなるだけじゃなく、一週間以上電気が点きません。どうするんですか。
この感染症の問題でも国が緊急事態宣言を出しましたが、罰則規定を設けないとどうしようもありません。感染症とか災害というのは相手が人間ではなく、私たちの理屈が分からない敵です。そこと戦うためには、法律をきちんと整備しないと負けます。そして、その根拠規定である憲法のあり方をしっかり議論すべきです。今起こって困ることになぜ対応しないのでしょうか。
(設立総会 各界からのご挨拶①・防災関係より)
医師・看護師の派遣、病床の確保は「お願い」ではダメ
松本尚・日本医科大学特任教授
今回コロナの対応では、病床や医師・看護師を確保したいと思っても中々応じてくれません。これは全て行政府が、医師・看護師あるいは病院経営者たちに「お願い」をするしかできなかったところに問題があると思います。
医療界全体を統合して指揮する組織体というものが実はありません。非常時にこのように脆弱な医療界でいいのかと、非常に危惧しています。これらの問題に対して、政府にきちんと提案を出来るための議論を進めていきたいと考えています。
(設立総会 各界からのご挨拶②・医療界より)
あらゆるリスクを想定しオールハザード型の危機管理を
井上隆・日本経済団体連合会常務理事
これまでの企業における危機管理は、例えば地震に対して、あるいは台風が起きたらと、個別の災害を想定したもので、今回のコロナのような世界的な規模の感染症とか、あるいは同時にその危機が起きる複合型の災害に、十分耐えるようなものでは無かったと考えております。
そこで、あらゆるリスクを想定して、結果として起こりうる事象への対応を基本とする、オールハザード型の危機管理、あらゆる危機から予め国民の生命と財産を守る、法治国家としての基本的な仕組みが必要ではないかと考えます。
(設立総会 各界からのご挨拶③・経済界より)
この危機を、日本の可能性に力に変えよう
大坪清・関西経済連合会副会長
新型コロナウィルスは一種の危機、クライシスです。関西経済連合会でもこのクライシスへの取り組みを本格化しようと、関西広域連合というものを2府8県でつくって、意見交換を行うということを続けております。
コロナ危機対応に対して、最近良い言葉だと思ったのは、バイデン大統領が議会で演説した時の言葉、“Turning peril into possibility. Turning setback into strength.”です。いわゆる危険に対してはその可能性を追求しよう、後退についてはそれを力に変えていこう、と宣言しています。このように危機も前向きな取り組みを具体的に宣言することが重要だと思います。
(設立総会 各界からのご挨拶④・経済界より)
知事として「お願い」に頼ることは政治の放棄
佐竹敬久・秋田県知事
県民の安全安心を守る責任者として、最も悩んだのは、県民や事業者、医療機関等に対する、およそあらゆることが、「お願い」の範囲に止まり、行政体としての法的、組織的な関与ができなかったことにあります。お願いに頼ることは、行政体としての責任が伴わないということにもなり、まさに政治の放棄ということにもなりかねず、近代国家としての姿ではないと思います。
今回の経験をしっかり踏まえ、次の危機に備えて法体系上の整備をすることこそが、目下の我が国の緊急の課題であります。
(設立総会 各界からのご挨拶⑤・自治体関連より)
明るい未来の日本社会を実現するために
山本信夫・日本薬剤師会会長
我が国では、これまで地震災害や風水害など、幾多もの自然災害に見舞われましたが、その度に復興を目指し官民挙げて努力を積み重ねてきました。しかし、「有事」に向けた「平時」からの準備や、国を挙げての仕組み作りや法整備という視点で見ると、まだやるべきことは山積している状態ではないでしょうか。
直面する課題解決と明るい未来の日本社会を実現するために、このフォーラムでの議論がその第一歩になることを祈念します。
(設立総会 閉会の挨拶より)
フォーラムから正しい情報発信を
高橋英登・日本歯科医師連盟会長
我が国の新型コロナウィルス感染症に対する対応は超過死亡(予測される死亡者数から増加した数)がプラスにはなっておらず、対策としては諸外国に比べ決して遅れを取っている訳ではありません。しかし世界的に低い評価を受けている、などの報道により、国民のマインドが落ちています。
正しい情報を正しい方法で国民に伝えていく役割をこの組織が担うべきと思います。また、昨今の自然災害に関しても災害関連死に対する対応も組織として取り組むべき課題です。これらを考慮し、本会が高い社会的評価をうけるべく私も危機感をもち全力で取り組んでいきたいと考えております。
(発起人より)
想定外に対応せよ
神野正博・全日本病院協会副会長
直近10年を振り返っても、東日本大震災からCOVID-19 感染蔓延まで、多くの想定外の事象が引き起っています。さらに、東アジアの国際的な緊張も、偶発的に想定外の紛争が起こる可能性を秘めています。
今こそ、想定外の事象に、国民の私権と社会の厚生を規定し、公衆の安全を第一に担保する有事法制の整備が必要です。
医療においても診療報酬制度の枠の外で、即応とSurge Capacity(予備役)の体制構築が求められます。
(発起人より)