〈「レジリエンス(Resilience)」とは、危機に対処する社会の回復の意味です〉

ニューレジリエンスフォーラム第1次提言 「緊急時」の医療提供体制と法制度の整備を

お知らせ

令和3年9月7日
感染症と自然災害に強い社会を
ニュー レジリエンス フォーラム

共同代表

河田惠昭
(関西大学特別任命教授・社会安全研究センター長)
松尾新吾
(九州経済連合会名誉会長)
横倉義武
(日本医師会名誉会長)

第1次提言
「緊急時」の医療提供体制と法制度の整備を

新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、現在、わが国は戦後最大の災厄に見舞われている。ワクチン接種は進みつつあるものの、第5波の感染拡大によって直ちに医療の管理下におかれない患者が急増しており、医療提供体制が破綻に近い状態にある地域、病院も増加している。

このような「緊急時」において国民の命と生活を守るため、如何にして医療提供体制と法制度の改善を図るべきかを議論し、この度、当フォーラムは医療界、経済界、防災関係、自治体関係等の諸団体が広く連携して、以下のような第1次提言をまとめた。

この第1次提言では、喫緊の課題である医療分野を中心に、現行法の運用により可能と考えられる事前及び緊急時対策などの改善策、更に現行法の枠を超えた「緊急時」に相応しい法制度の整備を提案する。なお、我々は引き続き協議を行い、第2次提言も予定している。

1. 医療提供体制の整備と医療従事者の確保

  • ①病床不足により「命の選択」をせざるを得ない事態を避けるため、「緊急時」に病床と医療従事者を広く確保すべく、すべての医療機関に対してより強制力のある法制度を整備し、運用面での実効性を担保する。
  • ②国が主導して、都道府県を越えた広域エリアでの医療機関の連携 をすすめ、「緊急時」の医療提供体制の仕組みや、情報が一元化されるICT(情報通信技術)基盤の整備を図る。都道府県は、仮設の大規模医療施設を速やかに展開できるように、マニュアルを作成の上、使用できる建設用地や建物を「平時」のうちに確保する。
  • ③感染症対応を含めた医療・保健について「緊急時」にも対応できるよう、「平時」から保健所の機能強化を図る。

2. 医療機関・医療従事者への迅速な経済的支援

「緊急時」に患者を受け入れる医療機関及び薬局に対して、国及び都道府県は迅速な財政的措置を行い、医療機関等の経営基盤を損なわないための支援を行う。併せて、医薬品・医療用資機材の安定的な供給体制を構築するために国内での生産、備蓄、流通に及ぶ体制を整備・管理する。また、医療従事者や医療機関等を支える人たちに直接的な経済的支援を行う。

3. 海外からの感染流入を防ぐ水際対策の強化

  • ①水際対策として、国内のすべての国際空港・港湾施設に常設の検査施設・待機場所を設置する。
  • ②海外からの帰国・入国者を停留させる宿泊施設を国が事業者と「平時」のうちに契約し、十分な収容能力を確保する。
  • ③水際対策の強化のため厳格な隔離を含めた管理体制を確立し、関係省庁および都道府県との円滑な連携の仕組みを構築する。

4. 国家安全保障としての感染症対策の戦略構築

  • ①パンデミックに加えて大規模自然災害などが同時に起こる可能性もあり、国家安全保障の立場から、複合災害に対応できるオールハザード型の医療体制の整備を行う。国民の健康危機管理のための保健インテリジェンス、全体戦略の立案、情報の一元化と正確な発信を行う広報機能を持つ司令塔組織を創設する。
  • ②国は、ワクチン・治療薬の研究開発・審査承認、更に生産体制に責任を持ち、「平時」からの長期的な国家戦略として取り組むとともに、「緊急時」の特例承認の制度を再考、整備する。

 5. 「平時」から「緊急時」への円滑な転換を図るための関係法令の整備

  • ①緊急時における病床・医療従事者の確保、ワクチン・治療薬の承認等のため、道路交通法の例に倣って「平時」から「緊急時」へのルールの切り替えの仕組みを作り、例えば、医療法、消防法、建築基準法などの関係法令のすべてに「緊急時」対応の規定を明記する。
  • ②法律に基づく現在の「緊急事態宣言」と異なり、内閣が国会のコントロールの下、憲法に明記された「緊急事態宣言」を行う制度を検討する。この宣言に基づき、全国もしくは特定地域に適用される関係法令は「平時」から「緊急時」のルールへと切り替えられるようにする。また、内閣による「緊急事態の終了宣言」もしくは国会による「緊急事態宣言の廃止決議」によって、「緊急時」のルールは「平時」のルールに戻るものとする。

 

 

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